■「娘が走る姿見たい」「皆さんにお礼を…」
【ハノイ=油原聡子】「明美ちゃん基金」が適用された「ベトナム医療団」の第1陣となる日本側医療団は1日、ハノイの国立総合病院「バックマイ病院」で、心臓病に苦しむ2人の子供の手術を行った。高度な技術を持つ日本の医療団を心待ちにし、祈るような気持ちで手術の行方を見守った子供たちの家族。医療団は日本の技術を丁寧にベトナム人医師らに伝え、2人の手術は無事終了した。
手術室に入ってから6時間。扉が開くと、家族は待ちきれないように移動式ベッドを取り囲んだ。横たわるのは、右心室と左心室の間に穴が開いた心室中隔欠損など4つの異常が重なる少女、ファム・ティ・モーさん(13)。手術後、母のラムさん(38)は「無事に成功してよかった。普通の子供と同じように走ったり遊んだりする姿が見たい」と涙ぐんだ。
ハノイから車で5時間の地方都市に住むモーさんは1歳で心臓の異常が判明。「早く手術をしないと命にかかわる」と言われたが、農業を営む両親は貧しく、費用を工面できずにいた。ラムさんは「手術をしてあげられないことが悔しかった。お金がたまる日まで生きていてくれるか心配で怖かった」と振り返る。
日常生活を送るのも難しく、中学校もやめざるを得なかった。昨年末、国から「貧困家庭」の認定を受け、医療援助が受けられるようになったのを機に両親は手術を決めた。不足分は親戚(しんせき)や銀行から借金。土地を担保に入れ、牛や豚などわずかな家畜もすべて売り、手術費に充てた。父のクオンさん(39)は「ホーチミンに出稼ぎに行くかもしれないが、それでもモーには元気になってほしい」と話す。
午後は右心房と左心房の間の壁に穴が開いている心房中隔欠損の男児、グエン・ニャット・ミンちゃん(4)が手術。生後1カ月半で病が判明したミンちゃんは知人の薦めでバックマイ病院に来院し、そこで「近く日本の医療団が来るから、その時に手術をしよう」と言われたという。
手術前、期待と不安を語っていた母のアインさん(30)は、手術成功の連絡を受けると「日本の医師をはじめ手術にかかわった皆さんに心からお礼を言いたい。ミンには『よくがんばったね』と声をかけてあげたい」と笑顔で話した。
両手術は医療団の指導の下、バックマイ病院のグエン・ホアン・ハー医師が執刀。いずれもトラブルなくスムーズに終了した。専門技術を指導した前東京女子医大心臓血管外科主任教授の黒沢博身医師は「ハー医師らは、こちらの意図にしっかり応えてくれた」と合格点を与え、ハー医師も「大変分かりやすい指導だった」と笑顔で話した。
「明美ちゃん基金」への振り込みは、みずほ銀行東京中央支店・普通口座110−567941「産経新聞社社会部明美ちゃん基金」。郵送の場合は、現金書留で〒100−8077 産経新聞東京本社社会部「明美ちゃん基金」へ。
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